近年、健康と「Happy」や「Positive」などの前向きな感情・思考の関係が注目されています。
どのぐらい注目されているかというと、世界でも有名なハーバード大学の公衆衛生大学院に「健康と幸せセンター( Lee Kum Sheung Center for Health and Happiness )」が設立されたほどです。このセンターは、前向きな思考や仕事のやりがいなどが健康にどう影響するか解明することを目的に研究しています。

感情が健康に与する影響

1.ポジティブ感情は心疾患や脳卒中のリスクを下げる?!

2009年に日本で行われた研究では、心疾患や脳卒中による死亡リスクは「人生を楽しんでいる意識」の高い男性が低い男性と比較し約半分でありました。
また、ロンドンで1万308人を12年以上追跡調査した結果では、ネガティブ感情を持つ参加者には冠動脈性心疾患発生のリスクが約1.3倍もありました。この結果は、喫煙、飲酒、1日の果物と野菜摂取量、運動、高血圧、血中コレステロール、糖尿病や仕事による精神的ストレスの因子で補正をしても同様でした。

*ポジティブ感情=プラス志向 楽観的 前向きにものごとを考える
ネガティブ感情=マイナス志向 悲観的 ものごとを悪い方にとらえる

2. 糖尿病になりにくい?!

糖尿病患者123人、非糖尿病患者220人それぞれがポジティブ感情かどうか調べた研究を紹介します。結果は、非糖尿病患者は糖尿病患者と比較してポジティブ感情スコアが有意に高い状態でした。
また、中高年の糖尿病患者19人を対象に、食事を摂った後で1日目は糖尿病についての単調な講義を受け、2日目には吉本興業の芸人による漫才を鑑賞して大笑いをし、その前後での血糖値の変化を調べた研究があります。食後であるために2日とも血糖値は上昇しましたが、その上昇の程度に差が認められました。講義を聞いた日の食後血糖値は平均で123mg/dL上がったのに対し、漫才を鑑賞した日は77mg/dLの上昇だったのです。つまり、漫才で爆笑した日は講義を聞いた日に比べて食後血糖値の上昇が46mg/dLも抑えられていたことがわかりました。

3. ポジティブな人ほど長生きする?!

ポジティブ感情を持つ人は、身体面の健康度が向上する結果、ネガティブ感情を多く持っている人よりも糖尿病から心疾患にいたるまでのさまざまな疾患にかかりにくく、その結果長生きすることがわかっています。
65歳以上のメキシコ人約2200人を対象とした研究では、ポジティブ感情の人はネガティブ感情を多く表現する人と比較して約半分の死亡率でした。

次回はどうやってpositiveになれるかを皆さまに共有していきます。

参考文献

1. Perceived level of life enjoyment and risks of cardiovascular disease incidence and mortality: the Japan public health center-based study. Circulation. 2009 Sep 15;120(11):956-63.
2. Positive and negative affect and risk of coronary heart disease: Whitehall II prospective cohort study. BMJ. 2008 Jun 30;337:a118.
3. Association between poor psychosocial conditions and diabetic nephropathy in Japanese type 2 diabetes patients: A cross-sectional study. J Diabetes Investig. 2018 Jan;9(1):162-172.
4. Laughter lowered the increase in postprandial blood glucose.Diabetes Care.2003;26:1651-1652. 6
5. Emotional well-being predicts subsequent functional independence and survival. J Am Geriatr Soc. 2000 May;48(5):473-8.