新型コロナウイルス感染症の患者数が増加の一途をたどっていますが、未だに巷では例年のインフルエンザウイルス感染症と同等であり、怖がり過ぎているのではないか、という意見も散財されています。

しかし、多くの事実から新型コロナウイルス感染症には、例年の季節性インフルエンザウイルス感染症よりも更に厳しく注意していかないといけません。

まず大きな違いは、新型コロナウイルス感染症のワクチンや治療方法が確立されていないことです。ワクチンは昨年末から欧米諸国で使用が始まりましたが、その効果はまだ正確にはわかっていません(もちろん、ワクチンの効果には非常に期待はしています)。

更には、新型コロナウイルス感染症の死亡者数と感染後の後遺症についても季節性インフルエンザウイルス感染症との間に大きな違いがあります。その違いについて説明していきましょう。

死亡率について

2020年12月に発表された最新の研究によると、新型コロナウイルス感染症による死亡率は、季節性インフルエンザウイルス感染症と比較して約5倍も高いことが分かりました。

  • 米国の退役軍人省の電子医療データベースを使った研究。2020年2月1日~6月17日にCOVID-19で入院した患者(3,641例)と、2017~2019年に季節性インフルエンザで入院した患者(1万2,676例)に関するデータを用いて、両者の死亡のリスクの違いを比較しています。
  • 季節性インフルエンザ入院患者と比較してCOVID-19入院患者は、死亡率は約5倍であることがわかりました(ハザード比:4.97、95%信頼区間:4.42~5.58)。また、人工呼吸器を使用するリスクは約4倍、集中治療室に入室(それだけ重症であるということです)するリスクも約2.5倍であることが分かっています。
  • とくに慢性腎臓病、糖尿病を基礎疾患に持つ人や、75歳以上の高齢者はリスクが高かったことが分かっています。

研究によってばらつきはありますが、共通していることは新型コロナウイルス感染症による死亡率は、総じて季節性インフルエンザ感染症のそれよりも数倍高い、ということです。

感染後の後遺症(合併症)について

新型コロナウイルス感染症後の後遺症についての報告が相次いで認められてきています。いつくかの報告をご紹介しましょう。

  • イタリア・ローマの⼤学病院の報告によると、回復後、COVID-19発症から約2ヵ⽉の時点においても87.4%の患者に何らかの症状があることがわかっています。患者の44.1%でQOLの低下が⾒られ、特に倦怠感(53.1%)、呼吸困難(43.4%)が多く認められています。
  • 中国鄭州⼤学などの報告では、COVID-19感染症にかかり、退院した55人(軽症4人、中等症47人、重症4人)の患者について、退院3カ⽉後の胸部CT画像や肺機能を調べた結果、39人(71%)の胸部CT画像に肺の線維化を含む様々な異常が認められ、肺機能の異常も14人(25%)に⾒られました。
  • COVID-19感染後の後遺症の多くは呼吸器、肺の線維化に関連していると推測されています。

インフルエンザ感染症でも感染後に脳症や肺炎などの合併症が認められますが、これほど多くの人が長期間にわたって後遺症に悩むことはほとんどありません。

皆さまに伝えたいこと

前回の最後にもお伝えしましたとおり、この恐ろしい感染症に対抗するには1人1人が免疫力を高めることが欠かせません。
前回同様、「免疫力を高める3つの生活習慣」を改めてご紹介いたします。

  1. 1日30分の日光浴
  2. 適切な睡眠時間
  3. よく笑う

これらの習慣は我々の免疫の司令塔であるNK細胞や白血球の活性などを上げることが分かっています。
是非、これらの生活習慣を意識して感染症に負けない1年を過ごしてください。

参考文献

BMJ. 2020 Dec 15;371:m4677.
JAMA. 2020;324(6):603-605.
EClinicalMedicine. 2020; 25:100463.