一般的な動脈硬化のリスク因子は喫煙、肥満や高血圧などが考えられています。
しかし、これらの古典的な危険因子以外にも体の中に発生する慢性炎症が動脈硬化の原因であることが最近の研究で分かってきています。
慢性炎症とは、体内で静かに炎症が起きていく炎症です。
ケガをしたときに皮膚が赤くなり、痛みを感じ、はれたりします。これは体内で起こっている急性な炎症で、ケガや病気になった時に突然生じる「急性炎症」です。これに対して、明らかな症状がないにも関わらず、体内で静かに炎症が起きていく炎症を「慢性炎症」といいます。

慢性炎症と関係する疾患

最近の研究によって、これまで慢性炎症との関連がないと思われていた疾患も、実は慢性炎症が関わっていることがわかってきました。更には老化そのものも、慢性的な炎症性の変化によって症状が進行するのではないかと考えられるようになってきています。

関係する可能性が高い疾患
動脈硬化関連疾患(高血圧症、狭心症/心筋梗塞、脳卒中、慢性腎臓病など)
糖尿病
様々な癌(悪性疾患)
アルツハイマー型認知症

関係する可能性がある疾患
喘息やアトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患
慢性疲労症候群
副腎不全など

肥満と慢性炎症について

我々の脂肪細胞からアディポネクチンというホルモンが分泌されています。アディポネクチンはインスリン感受性を上げたり、脂肪酸の分解促進や血管の拡張作用があると言われており、高ければ高いほどよいです。つまり、超善玉ホルモン、スーパー健康ホルモンであります。
しかし、我々が太って肥満になると脂肪細胞からアディポネクチンの分泌が低下してしまいます。低下すると糖尿病、心筋梗塞やメタボリックシンドロームになりやすくなるといわれています。更にこれらの疾患のリスクになるだけではなく体内の炎症も高くなってしまうといわれています。肥満が動脈硬化のリスクである理由の一つに慢性炎症が関係していると考えられています。

次回は、動脈硬化の新たな慢性炎症を抑えるための生活習慣についての話をいたします。

参考文献

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Am J Clin Nutr. 2009; 90: 1656-64
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