近年、健康と「Happy」や「Positive」などの前向きな感情・思考の関係が注目されています。
どのぐらい注目されているかというと、世界でも有名なハーバード大学の公衆衛生大学院に「健康と幸せセンター( Lee Kum Sheung Center for Health and Happiness )」が設立されたほどです。このセンターは、前向きな思考や仕事のやりがいなどが健康にどう影響するか解明することを目的に研究しています。
前回はpositiveと健康の関係性についてでしたが、今回は「ポジティブ」になるための生活習慣について皆さまにご共有していきます。
「ポジティブ」になるための生活習慣
1.友人や家族との質の高い関係を築くことが大切
ハーバード大学には80年間続いている「 成人発達研究 」という有名な調査があります。
対象は、1938年当時ハーバード大学の2年生だった男性268人(のちの第35代大統領となるジョン・F・ケネディ氏もこのうちの一人でした)と、ボストンの最貧地区に住む男性456人です。参加者は2年に一度配偶者との関係や仕事の状況などについてアンケートに答えたり、5年に一度健康についての情報を提出したりするほか、5~10年に一度は研究者と面談を行います。
この研究から、健康で幸せに年を取るためには、「周囲の人と良い人間関係を構築すること」が最も重要であるということがわかりました。「周囲との繋がり」で重要なのは人数ではなく質であり、特にパートナーとの関係は重要であることもわかりました。
2.禁煙
英国・バーミンガム大学が行った結果を紹介します。
研究は、喫煙者を対象にして、喫煙継続時または禁煙後の精神的な健康状態について評価を行った26つの過去の研究をまとめたものです。
結果は、禁煙者が喫煙継続者に比べてポジティブ感情についての上昇を認めました。また、喫煙継続者に比べて禁煙者は不安、うつ症状、ストレスといったネガティブな感情の症状が軽減されていました。
喫煙は一時的には前向きになるかもしれませんが、長期的に見ればポジティブ感情を生み出していない可能性があります。
3. 食事や運動
定期的な魚の摂取、定期的な運動や禁煙が、ポジティブ感情の1つであるワークエンゲージメント(≒仕事に誇り、やりがいを感じている状態のこと)の数値を高くしていました。
また、ネガティブ感情を持つうつ病患者においては、果物、マメ科植物(大豆、インゲン、えんどう豆など)やナッツの摂取量が少ないこともわかっています。
魚や豆類が多い「地中海食」か「伝統的な和食」は、身体の健康面のみではなく、ポジティブ感情などの精神面にも影響する可能性があります。
ポジティブ感情を持つための方法には、生活習慣の改善以外には、その人の強み(長所、取柄、利点)に焦点を当てる「日々の良いこと、できたことの振り返り法」や「マインドフルネス療法」などもあるということが証明されていますが、これについてはまた別の機会にご紹介したいと思います。
ポジティブ感情と健康との因果関係は、まだすべてが証明されたわけではありません。しかし、ネガティブ感情が強い人はさまざまなホルモンや細胞から分泌されるタンパク質などを介して、体内の慢性炎症を悪化させ、その結果様々な疾患発症のリスクを保有することになると考えられています。その一方で、「良い方向へ解釈しようとする」(ポジティブ感情を持っている人)人は、炎症の状態が軽い傾向があることがわかっています。
ポジティブ感情をうまく利用すれば、病気になる要因を軽減するだけでなく、心も体も健康であることを維持することもできるでしょう。
参考文献 1. Change in mental health after smoking cessation: systematic review and meta-analysis. BMJ. 2014 Feb 13;348:g1151 2. Personal lifestyle as a resource for work engagement. J Occup Health. 2017;59:17-23. 3. Total antioxidant capacity of diet and serum, dietary antioxidant vitamins intake, and serum hs-CRP levels in relation to depression scales in university male students. Redox Rep. 2014 ;19:133-9. |