~定義とその可能性~
前回は、ソーシャルキャピタルとはなにか、ということを、実例を交えてご紹介しました。今回はソーシャルキャピタルが持つ可能性、とくに健康に対するポテンシャルについて提示します。
ソーシャルキャピタル(絆)が健康に影響するとき
①個人に与える影響
②集団に与える影響
2つに区別して考えます。
①個人に与える影響
これは、ある個人が、別の個人に影響するということです。周りにいる良い健康習慣の友達に影響されて、自分にも健康に良い生活習慣が身についていくということがあります。例えば、以下のようなことです。
・友達が一緒にスポーツジムに行ってくれる。その結果、自分にスポーツジムにいく習慣がつく。
・友達が近所でマラソン大会があると知らせてくれ、それがきっかけで、ランニングする習慣がついた。
・友達が面接についてきてくれた。その結果、ストレスホルモンのコルチゾールの分泌が減り、血圧上昇も少なかった。
つまり、個人が別の個人へ影響し、その結果、影響を受けた人はプラスの結果を得ます。
②集団に与える影響
こちらは、絆の強さが集団全体に影響を与え、その集団の中の個人が影響を受けるということです。公益財としての側面があります。以下に、ソーシャルキャピタルが高い地域(住民の絆が高い地域)での例を挙げます。
・自治会や町内会が活発で、住民同士の関係が良好。自治会役員等が防犯見回りをしたり、住民同士で防犯活動を取り組んだりすることによって、ソーシャルキャピタルが低い地域よりも、犯罪を防ぐことができる。
・健康や生活安全に関する市民運動やボランティア活動が盛んで、ドラッグ使用や若者の喫煙、飲酒運転の予防につながる。
その集団の強い絆そのものが資産であり、その集団全体かつその構成員ひとりひとりにプラスの影響をもたらしていると考えられます。
健康へのさらなる可能性
前回、冒頭でご紹介したイチロー・カワチ先生らによると、アメリカの州レベルでの検討では、ソーシャルキャピタルの高い地域は、低い地域に比べて、死亡率が低いことが報告されています。すなわちソーシャルキャピタルを活かした健康作りには、大きな可能性が秘められているのです。
では、住民同士の信頼関係が強い地域に住むことと健康との関係は、具体的にはどのようになっているのでしょうか。
次回は、ソーシャルキャピタルが実際に健康に対して良いと証明された具体的な事例などをご紹介します。